夜間調理師学校[調理学](前半)

1年目<調理とは>

①調理理論を学ぶ意義:原理原則を知ることで再現性を持たせる。応用料理に生かす。

②調理の目的

  1. 嗜好性の多様化(おいしく)
  2. 栄養価の向上(健康に)
  3. 安全性の向上(安全・安心に)
  4. 調理の文化的特性(楽しく)

<おいしさの判断>

①視覚:五色(黄色、黒、青、赤、白)は彩のバランスと合わせて栄養バランスも良い

②嗅覚:嗅覚刺激もおいしさを決める要素

  1. 香りの感覚の特徴=>鋭敏だが、順応しやすい。好まれる香りは文化圏により様々。
  2. 食品の香り=>数百種類以上のにおい物質が存在し、さらに多数の複合刺激もある。
  3. 調理と香り=>調理操作によって生成する。食品がもつ揮発性成分や、調理・加工段階で生じるメイラード反応やアミノカルボニル反応などがある。

③味覚:おいしさを感じる中心

  1. 味の知覚:舌の表面にある乳頭の側面の味蕾の味孔に呈味成分が入り、味覚神経によって大脳皮質の味覚中枢に伝わる。
  2. 5つの基本味:味蕾で知覚できる味、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味、その他の味がある。化学的な基本の五味は、「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」。

<おいしさの構成>

・食べ物の側にある要因:化学的要因(味や香穂利など)と、物理的要因(温度・テクスチャー・外観・音など)がある

・食べる人側にある要因:心理的要因(感情・緊張など)、生理的要因(食欲・健康状態など)、環境的要因などがある

<味・テクスチャーについて>

・酸味:すっぱい味で爽やかさを感じさせる一方、腐ったもののシグナルとして警戒する味の一つ

・苦味:有毒物質のシグナルとして警戒する味の一つで、閾値(味を感じることができる最低濃度)が低いため微量で感じる

・テクスチャー:かたい、もちもち、つるつる、さくさくなどと表現される、舌触りやのどごしなど、口の中で感じる性質のこと

<味の効果>

・抑制効果:コーヒー+砂糖=苦味が抑えられるなど

・対比効果:すいか+塩=甘味が強まるなど

・相乗効果:グルタミン酸ナトリウム+イノシン酸ナトリウム=うまみがそれぞれ単独よりも強くなるなど

<調理操作>

①非加熱調理操作

・磨砕・粉砕:する、潰す、おろすなど、食品の細胞や組織を壊し、食品を細かく砕いたり、すり潰したりする操作のこと。それまで細胞中で別々に存在していた食品成分と酵素が混ざり、香味成分や辛味成分などが発生することがある。

・冷凍:食品の温度を下げ、食品に含まれる水分を凍らせる操作で、保存や調理操作の過程で行われる。野菜を冷凍するときは、ブランチング(湯通し)をして酵素を失活させて、急速に冷凍するとよい。

②加熱調理操作

・湿式加熱:ゆでる、煮る、蒸す、炊くなど水を熱の媒体とするもの。

・乾式加熱:焼く、炒める、揚げるなど、油や空気を熱の媒体とするもの。

・蒸す:水蒸気で食品を加熱する操作で、煮物に比べて煮くずれやうま味成分の流出が少ないが、加熱中に調味がしにくい。そのまま蒸す素蒸し、酢をかけて蒸す酢蒸し、酒をかけて蒸す酒蒸し、塩を振りかけて蒸す塩蒸しなどがある。

・揚げる:食品を油脂中で加熱する操作。

『でんぷんの衣による油の温度の見分け方』

・鍋底に沈み、なかなか浮き上がってこない:150℃以下

・鍋底につかないうちに浮き上がってくる:170℃〜180℃

・下に沈まず、油の表面で激しく散る:200℃以上

<米の調理>

・洗米:水を加える1回目は、米の給水量が多く、溶け出した糠ごと米が給水してしまうので、手早く水を取り換える。

・アミロペクチン:飯特有の粘りに関係する成分で、含量が多いもち米は粘りが強く、含量のすくないうるち米は粘りが少ない。

・うるち米(粳米)の炊飯時の加水量:重量(重さ、g)の1.5倍、容量(体積、ml)の1.2倍

・うるち米を原料とする上新粉は、水分を加えても吸水しにくく、生地がまとまりにくいため、お湯をいれて混ぜることが多い。

・もち米を原料とする米粉には、生でんぷんの白玉粉と、糊化でんぷんの寒梅粉、春雨粉、道明寺粉などがある。

<小麦の調理>

・タンパク質顔料の多い小麦粉は、グルテンをより多く形成するので、グルテンを形成させたい場合は強力粉を用いる。

・小麦粉生地には粉と水の割合によりこねられるドウ(パン、めんなど)と、流れてこねられないバッター(ケーキ、クレープなど)がある。

・小麦粉で麺を作る際に加える食塩は、グリアジンの粘性を強め、グルテンの網状組織を緻密にする。

・砂糖や油脂はグルテンの形成を抑える働きをするので、しっかりとしたドウを作る時は、小麦粉に水を加えたあとに砂糖や油脂を加える。

<そばの調理>

・グルテンを形成しないので、めんを作る場合は、小麦粉、やまのいも、卵白などのつなぎが必要。

<いもの調理>

・じゃがいも(男爵):粉質でマッシュポテトや粉吹きいもに適している。

・じゃがいも(メークイン):粘質で煮崩れしにくく、煮物に適している。

・ヤラピン:さつまいもを切った時、維管束のある部分から出る乳液状の粘液で、これが酸化すると黒く変色し、いもの色を悪くする。

・ガラクタン:さといもを切って水につけたときのぬめり(粘り)の成分。食塩やミョウバンで下処理すると粘りが抑えられる。

<砂糖の調理>

・砂糖:甘味をつけるとともに、食品の物性を変化させ、保存性を向上させるなど、調理や加工において重量な役割を持つ。親水性が強く、水分活性を低下させる作用があり、砂糖濃度が低いほど、食品の保存性が高まる。

<肉の調理>

・生肉の色:肉色素はミオグロビン、血色素はヘモグロビン。これらの量により赤色の濃い薄いが決まる。

・生肉を「保存」するとミオグロビンは酸素の吸着によりオキシミオグロビン(鮮紅色)になり、さらに酸化はすすむとメトミオグロビン(褐色)になる。

・生肉を「加熱」するとミオグロビンはメトミオクロモーゲン(灰褐色)になり、さらに酸化はすすむとメトミオグロビン(褐色)になる。

・生肉には水分が50~75%含まれており、保水性が高い。

・肉を長時間水分と一緒に加熱するとコラーゲンがゼラチンに変化して柔らかくなる。

<豚肉の調理>

<ひき肉の調理>

・表面積が大きいため脂質が酸化されやすく、細菌がつきやすいため、保存に注意する。

<鶏肉の調理>

牛肉や豚肉に比べて結合組織が少ない。

<魚介類の調理>

・塩締めには、直接塩をまく「振り塩法」、塩水を作って魚を漬ける「立て塩法」、魚をぬらした和紙で包んで塩を振る「紙塩法」がある。

・酢締めは、塩締めした後、食酢に漬ける。

・赤身魚は筋漿たんぱく質が多く、筋線維が細く加熱すると硬くなる。

・白身魚は筋漿たんぱく質が少なく、筋線維が太いので加熱するとほぐれる。

<卵の調理>

・茶碗蒸しやプリンは90℃以上で蒸すと水蒸気によってすだちが起こるので、85℃〜90℃で蒸し加熱する。

・卵濃度が低いほど凝固しにくい。

・泡立てる:卵白+砂糖=泡立ちにくいが安定性がある。温度は高い方が起泡性は良い、安定性は悪い。

<乳類の調理>

・カゼイン:牛乳の主なたんぱく質で、酸によって凝固する。

・ラクトグロブリン:熱変性で皮膜を形成する。

・クリームは水中油滴型のエマルション。バターは油中水滴型のエマルション。

・チーズはナチュラルチーズと加熱加工したプロセスチーズがある。

<油脂を用いた調理>

・油を熱した時に煙が出始める温度を発煙点といい、新しい油は発煙点が高く劣化すると低くなる。

・ショートニング性は小麦粉製品のグルテン形成を弱めもろく砕けやすい性質を与える特性。パイやクラッカーに利用。

<ゲル状食品の調理>

・不可逆ゲルは元のゾル状に戻らないもの。

・寒天は植物性で、長く置くほど中に閉じ込められた水が離漿しやすい。

・ゼラチンは動物性で融点が人の体温より低いので口触りが滑らかである。

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